So-net無料ブログ作成

小さい秋みつけた

 あの猛暑からかなりの残暑を覚悟していました。

それなのになんと夏休みが終わった頃から凌ぎやすい毎日が続いています。

そううまく行くはずがないと、身構えているうちにもう九月も半ばです。

 先日玄関脇の南天の木に目をやった時えっ!思わず声が出てしまいました。

二メートルほどもある木のてっぺんの葉が紅葉しています。

小さい黄色い葉もあれば薄赤いの、そして狂おしいまでの真紅。

 私は近くの小学校が見える道の端まで走って行きました。

三百メートル位向こうに見える、グランドに沿って聳える五本のポプラの木は

あおあおと空に向かって立っています。

 でもその空の色は薄く澄んだまさに空色、漂う白い雲を乗せて清かです。

この空色は絶対に絵具で出すことは出来ません。自然が連れて来た秋の色。

 ああ秋が来たんだ! 感慨にふける私の目にとどめの一発。

 すぐ裏の休耕田のあぜ道に燃えるように整列した真っ赤の彼岸花。ああ。

家の中ばかりにいて、スーパーへ行く位で、家の周りにすら関心がなかった私。

 みればあの秋明菊だって白いつぼみが膨らみ始めているし、時にバイクの

前をよぎるとんぼだって、いつしかアキアカネに。

 夜だって聞こえるのは蛙の声ではないよ。

 
 病後です。私弱ってます。当然毎日しんどいです。いいことなんてないんです。

だって私年だもの。  なんて弱虫、なんてだらしない私。

 
 この所日本列島は自然に翻弄され続け、人間をあざ笑うような災害に襲われ

ています。それでも被災地の人々は元気に立ち上がり、それらを支援し続けて

いる大勢の人がいます。

 そして自然の移ろいは美しい姿で、人々の心を癒し優しさをいっぱい振りまい

てくれます。

 今日は朝から雨模様、この良い季節を機に頑張ろう。少し元気が出てきました。
nice!(9)  コメント(7) 

りんどう紀行 [短編]

 フェリーは六時半にМ港に着いた。窓から外をみると港は朝もやにけむり
海は穏やかだった。
 一晩中エンジンの音を気にしつつも、志野はいつの間にか眠ったらしい。
船を下り港内を出ると目の前の大通りをМ駅に向かう。
 夜が明けたばかりの空は初秋の色を漂わせて、いい天気のようだ。
志野と同じようにМ駅方面へ歩くに人も大勢いて心丈夫な気がする。
 目的地のK駅まで、ここから普通列車で約二時間の旅だ。志野はこのゆっくり
走る列車の沿線風景が気に入っている。
 夫の転勤で初めてこの線を知り、二回目の今日はもっと色々見たいとわくわく
していた。
 М駅を出て三十分も走ると左側の窓に、突然滔々と流れる大川が現れる。
向こう岸は見えないほどの大川に沿って走る列車の音だけの世界。
キラキラ光るさざ波や遠くの対岸の景色は志野を夢の国へと誘う。
 川から離れて直ぐに沿線一の大都会H駅に着く。この駅の人の流れは凄まじく
田舎者の志野はここで乗り換えでなくて良かった....などとほっとしたりする。
駅の周辺にはビル群が林立し、動き出した大都会で人間もまた忙しい一日の
始まりなのだ。
 ここを過ぎると田園風景が続くかと思えば、小さな街もあったり池が見えたり
旅を楽しんでいることを実感し、退屈する暇のない二時間余りだ。
 目的のK駅は夫映の単身赴任地だ。

 先夜志野は夢を見た。
 広い広い野原に志野は一人で立っている。風が行き遠くに連なる里山は秋の
夕陽に茜色に包まれ、足元に青紫も美しいりんどうの花が咲いている。
後ろで誰かの足音がして、大声を上げた自分の声で目が覚めた。

 たったそれだけの夢だったが、目覚めてからもあのりんどうの花の色が志野の
脳裡から離れなかった。
 そしてこの時急に映のところへ行きたいと思った。
 彼も転勤して二年になるので、そろそろ帰れるのではと二人とも思っていたので
この時期の行き来は考えていなかった。
 夢のことは話さずに突然だけど訪ねたいと電話をすると、映は驚いた様だったが
「心配ごとではないんだね。仕事の方は大丈夫?」と嬉しそうに...志野には聞こえた。

 列車の揺れるままに流れる景色追っていると、夢が現かふとあの人の面影を見て
遠い遠い昔を思い出した。

 会社勤めをしていたある秋、レクで紅葉狩りに行くことになった。三十名程の若い
男女の山行きは賑やかで楽しくて、わいわいと渓谷を歩き、足を延ばした牧場で一
休みとなった。
 のんびりと草を食む牛たち、風にゆれるすすきの白波。美味しい牛乳を飲みみんな
大満足で楽しい時を過ごした。
 その時志野は牧場の柵に沿って揺れているりんどうの花を見つけた。こんな所に
彼女はしゃがみこんで、その花を眺めた。凛としたその花の色と姿が心に残った。
 夜の山小屋では歌ったり踊ったり、夜の更けるのも忘れて大騒ぎの楽しさ。
志野は少し疲れてひとりテラスのベンチに座っていると、すーと人影が前に立った。
同じ課のあの人だった。彼は手に持った小さな花束を前に差し出し「この花好きなん
だろう」と言った。そして驚いている志野の言葉も待たずに「あげる」と押しつけるように
花束を手渡すと、さっさと向こうへ行った。
 りんどうの青紫が月の光にさやかだった。彼は昼間の志野の様子を見ていたのか。
 その後あの人は何もなかったように志野に接した。二人は仕事以外話をすこともなく、
時が流れた。
 このことは志野もいつしか忘れてしまっていたが、青春の少し切ない思い出となった。

 あの夢はもしかして.....あの足音はあの人?

 志野が思いに耽っているうちに列車は目的のK駅に着いた。
 田舎の小さな駅で列車か゛止まった時、志野はホームの外の自転車置き場から子供
のように手を振っている映の姿を見つけた。
 遠目にも元気そうで、張り切っているように見えた。「元気そうでよかった。」志野は思
わず呟いた。
 映は出て来た志野に走り寄ると「元気そうでよかった。」と大きな声で言った。
二人が同じことを思っていたのだと志野は可笑しかったが、嬉しくもあった。

 二年前の秋転勤で初めてこの町に来た時、家の整理整頓、新任の挨拶回り、買い物
など目の回るような四日間だった。志野の仕事の都合もあり日にちもなかった。
 知らない町に一人住む映に心を残しながら、志野が帰る日の朝、何気なくみた庭の
片隅にひっそりと咲いているりんどうの花を見つけた。志野は大声で「ねえ一寸来て」
と映を呼んだ。「あの花、気が付いていた?」 志野の指さす先にりんどうを見た映は
「全然気が付かなかったなあ。前任者が植えたんだね。こんなにきれいに咲いている
のに気が付かなかったなんて....」映は庭に下りるとしゃがみこんで愛しげにその花に
見入っていた。その様子をみながら志野は、何故か急にこの家に親しみを覚えて少し
安心したものだ。
 あの日がら二年、志野はあの夢を見た時、この宿舎のりんと゛うを思いだした。そして
すぐに見たいと思った。
 映には笑われそうな気がして、そうとは言えなかった。でも花好きの映があの一群の
りんどうを、庭一杯に咲かせているだろうことは充分想像出来た。
 宿舎への道を映の運転する車に揺られながら、志野は夢の花を見に来たなどとは
決して言うまいと思った。こんなに嬉しそうな映に「突然貴女に会いたくなって来た」
などと言ったら彼はきっとご機嫌で、美味しいもの食べに行こうと財布をはたくだろう。
 映はにこにこ顔で口笛を吹いている。
 彼は今宿舎の庭一面に咲いたりんどうを見て、大喜びの志野の様子を想像して
充分幸せな気分だった。

nice!(7)  コメント(6)